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論理的思考のススメ (2)

beko

この記事は1年以上前に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。

ある命題 P の「否定」は記号 ¬ を用いて ¬P と表されます。
例えば、

  • 「犬である」の否定は「犬でない」
  • 「赤い」の否定は「赤くない」

この「否定」をきちんと理解していないことも、しばしば正しい推論を妨げる要因となります。

例えば、命題「x は正の数である」 (x > 0) の否定は何でしょう?

「x は負の数である」 (x < 0)

と答えてしまった人は残念ながら不正解。

「x は正の数でない」 = 「x は 0 以下」 (x ≤ 0)

が正解となります。

さて、それを踏まえた上で次の問題を考えてみてください。
製品 (具体的に何とは言いませんが) のセールスコピーに

「(あなたが) □□□□を使わない理由はありません。」

というものがありますが、これが (論理的に) 意味するところは何でしょう?
二重否定が使われて分かりにくくなっているので、これを少しずつ変形していきます。

1. □□□□を使わない理由はない
2. ¬(□□□□を使わない理由がある)
3. ¬(□□□□を使ってはいけない)
  ↓ (「使ってはいけない」の否定は「使ってもよい」なので…。)
4. ¬(¬(□□□□を使ってもよい))
  ↓ (命題の否定の否定は、元の命題に等しいので…。)
5. □□□□を使ってもよい

つまり、このコピーの主張は、「□□□□を使ってもよい」です。(「□□□□を使うべき」ではありません。)
遠回しな言葉遣いをした結果、(論理的な) 説得力・訴求力がかえって弱くなってしまっています。
その製品を使わせいたいなら、「使わない理由 (デメリット)」がないことよりも、「使う理由 (メリット)」があることを説明すべきでしょう。
「使わない理由はないけれど、それでも使わない」という選択も、依然として可能なのですから。

担当: 成田 (実用屁理屈検定2級)

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