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期待値

beko

この記事は1年以上前に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。


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突然ですが、「サイコロを振り、出た目 N に応じて 100×N 円が貰える」というゲームは、参加料がいくらならばやる価値があるでしょう?
1 ~ 6 までの目が出る確率はすべて 1/6 なので、貰えるお金の期待値は、

(100 + 200 + 300 + 400 + 500 + 600)/6 = 350 [円]

となり、参加料が350円未満なら (平均的に) やる方が得ということが分かります。

このように、「期待値」はとても便利な概念なのですが、肝心なのは使い方。
これを誤るととんでもない結論に行き着いてしまうこともあるので、注意が必要です。


担当: 成田 (続きを読むには、上の >> をクリック)


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期待値というのは、あくまで確率で重み付けされた「平均」であり、期待値に相当する (あるいはそれに近い) 事象が必ずしも存在するとは限らない、ということには留意しておく必要があります。

例えば、「じゃんけんで勝った方が、負けた相手から1万円貰える」ゲームでは、獲得できる金額の期待値は 0 ですが、実際には勝つか負けるかのどちらかなので、期待値に相当する (お金のやりとりが発生しない) 事象や、それに近い (100円程度のやりとりで済むような) 事象も発生しません。
降水確率が50%だからといって、外に干した洗濯物の半分だけが乾いたりはしないのと同じでしょうか。
 
もちろん、何度も勝負を繰り返していけば、トータルの収支は確実に 0 へと収束していきます。(参考: 大数の弱法則)


担当: 成田 (まだまだ続きます。)


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あまり一般的ではありませんが、「期待値」が計算できない状況も存在します。

コインを表が出るまで繰り返し投げるゲームを考えてください。
N 回目で表が出たらそこでゲームは終了し、 2N 円貰えるとします。
このとき、貰える金額の期待値はいくらになるでしょうか?
1回目で表が出る確率は 1/2, 2回目で表が出る確率は 1/4, 3回目では 1/8, 4回目では (中略) なので、期待値は

1/2×2 + 1/4×4 + 1/8×8 + 1/16×16 + …
= 1 + 1 + 1 + 1 + …

となり、無限大に発散してしまいます。
ということは、有り金を全てはたいてでもこのゲームに参加した方が得ということでしょうか?いやいや、そんなわけはないですよね。(参考: 聖ペテルスブルグのパラドックス)


担当: 成田 (賭け事には向かない性格)


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「めったに病院に行かないのに、保険料を払うのは損だ」などと言う人がいますが、これは期待値を求める対象を誤っている例と言えます。
仮に、ある人が1年以内に入院する確率が 0.5%、入院には300万円が必要で、その7割は保険によって賄われるとしましょう。
このとき、保険によって給付される金額の期待値は、

0.05×,3000,000×7/10 = 10,500 [円]

となるので、「一年あたりの保険料が 10,500 円以上であれば加入しない方が得」と言われれば、「そうかな」とも思ってしまいます。
しかし、この議論には大きな見落としがあることにお気付きでしょうか。
それは、保険というのは「出費」ではなく、「危険度 (リスク)」を抑えるための制度だということです。
一般に、出費と危険度の関係は線形 (比例) ではありません。
例えば、300万円の出費の危険度は30万円のそれの10倍よりも大きくなります。

N 円の出費に対する危険度を 0.001×N1.5 と見積もってみましょう。
出費が 1万円ならば、危険度は 1,000、10万円なら 31,622、100万円なら 1,000,000 となります。
上の例では、保険適用時の自己負担は90万円なので、300万円満額を払うことから相対的に回避できる危険度の大きさは約 4,300,000。これに発生率の 0.5% を掛けて保険料の期待値を出すと、年間 7万8千円程度と出ます。

もちろん、この議論は非常に大雑把にあれこれ省いているので全然正確ではありませんが、的は外していないつもりです。
要するに、期待値を使うときは、自分が「何の」期待値を計算しているのか?それは妥当なのか?ということを常に意識することが大切だということです。



担当: 成田 (保険の勧誘員ではありません。)

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