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医療費の自己負担の有無~アメリカの医療保険からの考察~

meguro

この記事は1年以上前に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。

今日はアメリカで実際に行われた医療保険の実験について紹介したいと思います。

実験はアメリカの非営利シンクタンクRAND研究所が1971年から1982年までに行った「患者の受診行動と医療費の自己負担率の関係、そして保険の有無での健康状態の影響」についてです。

内容はアメリカ政府が資金提供の元で、被保険者の受診動向についての調査で、医療保険の自己負担率が0%~95%という保険内容に無作為に振り分けするというものです。(0%とは医療費全額無料、95%はほぼ全額負担ということ)

割り振りのグループは無料プランと中間型プラン25(医療費25%)、中型プラン50(医療費50%)、カタストロフィープラン(医療費95%)と分けられました。対象の人々は2750世帯、7700人で被保険者の家庭の健康状態、医療機関の受診頻度など変化が表れるかが問われました。

受診回数は無料プランだと年に約5回、25%は約3回、50%も約3回、カタストロフィーは約2回という結果になりました。結果から自己負担率が増えると患者の「受診回数」が減少し、つまり医療費の総額が減少につながるということがわかりました。

この実験から、医療費の無料化というのはモラルハザードを引き起こしてしまい、念のために病院に行こうという考えになってしまい、一方で医療費をほぼ全額払わなければならない保険プランの方は、病気にかかってもお金がかかるので我慢しようとしてもっと重症になるという実験結果もでているようです。日本では最近、コンビニ受診などの問題もありますが、人間の行動科学にも着目し医療を考えることも必要になってくると思われます。

担当: 目黒
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One response to “医療費の自己負担の有無~アメリカの医療保険からの考察~”

  1. なりた says:

    保険の負担率というのは、リスクとベネフィットのトレードオフで決まるものなわけで、最終的には「生命」あるいは「健康」というものの価値を (金額として) どの程度と見積もるかという問題に帰着するでしょう。そうしたことを国民一人一人が考える材料としても、こうした実験は意義あるものですし、その結果をこのように分かりやすく紹介してくれるエントリもとてもありがたいですね。
    私としては現在の日本の保険制度 (皆保険) というものは非常に優れた制度だと考えているので、逼迫する医療費や、本エントリでも触れられているモラルハザードの問題を解決するための工夫をこらして、なんとか存続させて欲しいと願っているのですが、果たしてどうなることでしょうか…。
    国民皆保険制度がわりとうまくいっていた理由 – NATROMの日記
    http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20090310