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唾液がんマーカープロジェクトのご紹介と、免疫系におけるサイトカインの働き

yahata

この記事は1年以上前に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。

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こんにちは。CTOの八幡です。

弊社では、昨年度から「唾液マーカーによる非侵襲・迅速・安価なガン兆候の検出技術の開発」(通称:唾液がんマーカープロジェクト)というプロジェクトを進めています。

第6次ふくしま医療福祉機器開発事業に採択されました – Eyes, JAPAN Co. Ltd.

この唾液がんマーカープロジェクトについて噛み砕いてご説明しますと「唾液から検出されるサイトカインと呼ばれる物質を元に、がんのリスクを探るためのキットを開発しよう」というプロジェクトです。

弊社の武器としては機械学習やアプリケーション開発の知見を、また医療の専門的知識については信州大学の山口教授をはじめご協力をいただきながら、それぞれの強みを活かして開発を進めているところです。

根拠に基づく医療

医療分野では根拠に基づく医療(EBM:evidence-based medicine)という言葉があります。これは、実際の臨床研究などによって得られた疫学的・統計学的なデータに基づいて医療行為を選択しよう、というわけです。

このEBMのベースとなるデータのひとつに医療論文が挙げられます。
医療論文の検索サイトとして有名なのがPubMedというサービスですが、PubMedに登録される医療論文の増加ペースは、なんと2009年時点で年間71万件にもなるとか!
これはとても医師一人で読み込むのは不可能。こういった領域にこそ人工知能が活用されるべきと思うわけなのです。

近年では、Microsoft Azure MLやIBM Watsonの活用がニュースになったりと、医療と人工知能の融合はものすごいスピードで進んでいますね。

本プロジェクトにおける機械学習

さて、今回の唾液がんマーカープロジェクトでも、PubMedの医療論文をベースにした機械学習技術を使っています。
具体的には、医療論文に記されたサイトカインとがんの関係性を抽出して機械学習モデルを構築し、「このサイトカイン含有量だとこれだけのがんリスクがありそうですよ」という受診勧奨に活用しようということを考えています。

サイトカインって?

サイトカインは、一部では情報伝達分子と呼ばれることもあるそうで、免疫細胞同士のコミュニケーションに使われるタンパク質を指します。

このサイトカインと呼ばれるタンパク質にはいくつか種類があり、インターロイキン(IL)、インターフェロン(IFN)、TNF-α、などなど、全部まとめた総称がサイトカインです。誤解を恐れずに例えると、ビタミンA, B, C…が全部まとめてビタミンと呼ばれるのと似ているかもしれません。

ところで、免疫細胞のコミュニケーションとは一体何なんでしょうか?免疫学のバックグラウンドが無い方のために、ものすごく簡単に説明してみます。

ヒトの体には免疫の仕組みが備わっていることは皆さんもご存じかと思います。体内に病原体やがん細胞などの敵を発見すると、抗体を作って敵と戦ってくれるのが免疫の働きです。この働きに欠かせない2つの代表的な免疫細胞があり、それがT細胞とB細胞です。

この免疫細胞がどのように働くのでしょうか。まず、T細胞は司令官・B細胞は兵士だと考えてみてください。

T細胞が体内で敵発見の報告を受けると、兵士であるB細胞に対して指名手配書を配ります。指名手配書を受け取ったB細胞は、抗体をどんどん生成して敵を攻撃するようになります。これによって免疫の仕組みがうまく働くわけですね。

そして、ここでいう指名手配書にあたる物質こそが、サイトカインなのです。

まとめ

免疫細胞が体内でがん細胞を見つけるとサイトカインを放出するのは、上で述べた通りです。体液に含まれるサイトカインを調べると、免疫細胞ががんと戦っているのかどうか、ひいては発がんの状況を調べることが可能になります。

また、例えば前立腺がんであればIL-6が多く放出されるなど、がんの種類によってサイトカインの種類も変わってくることが分かっています。つまり逆に考えると、サイトカインの種類を調べることで、がんの種類まで特定できるというわけですね。

本プロジェクトでは、唾液に含まれるサイトカインを検出することでがんリスクを探ろうという「非侵襲、部位の特定、迅速・安価」をコンセプトに進めています。
がんの不安を抱える人々に、がん早期発見の安心感を提供できればと願っています。

本プロジェクトの概要についてご興味がありましたら、ぜひフォームからお問い合わせくださいませ。

お問い合わせ | 株式会社Eyes, JAPAN

担当:八幡(バイオが面白い)

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