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デザイン思考から考えるアイデアの発想

Misato Usui

この記事は1年以上前に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。

先日、CTOの八幡くんから「あるプロジェクトのアイデア発想に行き詰まっているが、デザイン思考の考え方を使って解決できないか?」という相談を受けました。以前、サービスデザインワークショップ(過去記事:サービスデザインワークショップ 参加レポート)に参加してからデザイン思考には興味があったのですが、実際のプロジェクトにどう落とし込んだらよいのか改めて考える機会になりましたので、Blogにまとめてみたいと思います。

デザイン思考とサービスデザイン

デザイン思考とは、デザイン・コンサルティング会社のIDEOが提唱した概念で、人々の生活や価値観の洞察から、解決すべき問題を見極め、解決のためのデザインをプロトタイピングし評価する”というプロセスを繰り返しながら、新しいユーザー体験を提供していく方法です。
そして、サービスデザインはこのデザイン思考という概念を具体的にビジネスに落とし込むという文脈で用いられています。

問題解決よりも先に「問題の定義」をすべき

さっそく八幡くんに具体的にどんなところで行き詰まっているのか尋ねてみると「2社共同で新しいプロジェクトを始めるにあたって、それぞれのコア技術を活かした新しいサービスを作りたいが、なかなか良いアイデアが出ず会議を重ねてもアイデアが二転三転してしまっている」ということでした。

ここで、デザイン思考のステップを確認してみましょう。
デザイン思考では以下のステップを繰り返しながら新しいユーザ体験の提供を目指していきます。

Step1. ユーザ調査
Step2. 分析・問題定義
Step3. アイディエーション
Step4. プロトタイピング

今回は、2社それぞれの得意な技術を活かして「なにか」新しいサービスを開発したいということでしたが、デザイン思考ではユーザありきで考えを進めていきます。技術ありきでアイデア発想をスタートするのと、ユーザありきでスタートするのでは大きな違いがあることをまず認識しました。

現時点ではStep1のユーザ定義がなされていません。しかし、前述の通りデザイン思考ではユーザがいないことには何も始まりませんので、今回はプロジェクトメンバーを開発者兼ユーザということで仮定義することにしました。

ユーザが定義されたところで、Step2へと進みます。Step2ではStep1で定義されたユーザが生活するなかで、
・不便に思っていることや
・こんなのあったらいいな
と思うことを問題として定義します。

ここではポストイットなどを使ってチームでブレストを行っていくのですが、今回は「2社の得意な技術を活かしたい」という縛りがありますので、どんどん出していったアイデアの中から技術を活かして解決できそうなテーマを選んでいくのが良さそうです。

また、問題を定義する際にはチームメンバーがより多く共感できるテーマを選定するのもポイントです。これを「アハ体験」と呼ぶのですが、「これこれ!それ私も困ってた!」というようにチームメンバーが共に共感できるテーマを選定することによって、プロジェクトがより「自分事」になっていきます。「他人事」よりも「自分事」の方がプロジェクトに対するモチベーションが高くなるのは明白ですね。

問題定義ができたら、やっと問題解決の方法を考える

解決すべき問題が決まったら、今度はその問題の解決方法について考えます。デザイン思考のプロセスでは、「問題の定義」と「問題の解決」で2回アイデア出しを行うようになります。
解決方法を導き出すツールについては今回は触れませんが、解決方法は個々のタッチポイントだけに留まらず、サービス全体を考慮してデザインしていくことが必要です。

例えば、子どもが病院で注射を嫌がって泣いてしまう場合を考えてみましょう。医師の視点から見ると、子どもは痛いから注射が嫌で痛くない注射ができれば泣かないのではないか。と考えるかもしれません。それはもちろん間違いではないのですが、子どもの視点からみると注射の痛みよりも、慣れない病院の環境や知らない白衣の医師や看護師がそもそも恐怖感を強めているかもしれません。

このようにそのサービスに関わっているさまざまな人物の視点に立って考えることで、問題の根本の解決方法がより見えやすくなるのです。

一連の体験をプロトタイピングする

問題の解決策は一連の体験(エクスペリエンスジャーニー)として整理しましょう。先ほどの子どもの例で言えば、病院を訪れてから注射を受けて帰宅するまでの一連の体験をストーリー仕立てでまとめます。ここで言うプロトタイピングは、プロダクトの物理的なプロトタイピングという狭い意味ではなく、ユーザがそのサービスを受けることによって受け取る体験すべてという広い意味となります。

このようにストーリー仕立てで整理することによって、そのサービスが課題をどう解決しているかがわかりやすくなります。

まとめ

デザイン思考は上記の4ステップを繰り返しながら新しい価値の創造を行っていきます。問題の解決の前に問題の定義が必要である。ということは当たり前ではありますが、意外と見落としがちなのかもしれません。

今回八幡くんから相談を受けたプロジェクトは現在、Step2の問題定義を行っているようです。
アルベルト・アインシュタインも「問題解決に20日かけられるなら、19日は問題定義に使いたい」という名言を残しています。ここはできる限り時間をかけたい部分ですね。

“If I had 20 days to solve a problem, I would take 19 to define it.”
-Albert Einstein

みなさんもアイデア発想に行き詰まったら、ぜひ「ユーザ視点の問題定義」を重視して、デザイン思考の手法を試してみてはいかがでしょうか?

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