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社会を一新する次世代通信5G – その真価は「高速」ではない

藤沼


去る2019年2月末、スペインのバルセロナで今年も「Mobile World Congress(MWC)」が開催されました。ご存知の方も多いかと思いますが、MWCは移動体通信事業者の国際団体GSMAが主催する世界最大規模のモバイル業界の展示会で、世界中から通信事業者・通信機器メーカー・端末メーカー・ベンダー各社など数多くのプレーヤーが集まります。来場者数は約10万人、出展社数は2,300社以上の文字通り一大イベントです。

MWCでは各社から最新の技術や製品が発表されるため、モバイル業界関係者はMWCの動向を注視しています。通信キャリアに勤めていた私も例外なくその一人でして、MWCやMWC上海(MWCのアジア版)に行っていた仲間から展開されるレポートを毎年楽しみにしていました。

さて、今年のMWCのキーワードは「折りたたみスマホ」と「5G」でした。今回は5Gに焦点を当てて、「5Gとは何なのか?」「5Gで私達の生活がどう変わるのか?」をご紹介します。

モバイルトラフィックはこの10年で約60倍に増加

5Gの話に入る前にモバイル網のトラフィックがどの様に推移しているのか見てみましょう。総務省によると移動通信のトラフィックは直近1年間で30%増加しています(画像1)。もう少し長いスパンで見ると、2010年〜2017年の間で下りトラフィックは30倍以上増加しています(画像2)。このままの推移で行けば、今年(2019年)には2010年比で下りトラフィックが約60倍に達する計算になります。

【画像1】総務省: 情報通信統計データベース – 我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計・試算
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/field/tsuushin06.html
【画像2】総務省:放送サービスの未来像を見据えた周波数有効活用に関する検討分科会(第2回)配布資料
資料2-4 インターネットトラヒックの現状(三菱総合研究所)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/housou_kadai/02ryutsu07_04000183.html

これは言うまでもなく、スマートフォンの普及に伴いモバイル環境でインターネットを利用する人が増えた事に起因します。特にここ数年はYouTube, Netflix, TikTok等々の動画コンテンツを楽しむユーザが増えており、一人で数十GBクラスのパケットサービスを契約するユーザも当たり前になりました。私も携わっていたのでよく覚えていますが、国内でデータシェアリングが始まった当初(2014年頃)は一人向けのデータ容量はせいぜい8GBであり、10GB以上は家族向けという設計でしたので、こうしたところからも需要の急激な伸びを実感することができます。

「高速・大容量」から「超低遅延・超多数同時接続」へ

音声通話から始まった携帯電話サービスは、より便利で豊かな社会の実現のために2G, 3G, 4Gと進化を遂げてきました。「高速・大容量」なモバイル通信環境を手にした私達は、外出時も家にいるのと変わらないような快適さでインターネットを利用することが出来るようになりました。今となっては固定のインターネット回線(FTTH)を契約しない人もでてきているほどです。

話を5Gに移しましょう。5Gの特徴は「超高速・超大容量・超低遅延・超多数同時接続」です。高速化・大容量化は想像しやすい進化なので割愛し、超低遅延・超多数同時接続にフォーカスしてお話します。

「超低遅延」が物流と医療を変える

「超低遅延」とはエンド・ツー・エンド(通信の送信元から送信先)で情報の伝達に掛かる時間がほとんどかからないことを指します。どのくらい遅延がないかというと、4Gの世界では遅延が数十ミリ秒だったのに対し、5Gではこれを数ミリ秒まで短縮することを目指しています。私達人間にとって見れば、もともと数十ミリ秒しか無かった遅延が数ミリ秒になったところで大した差は感じられないでしょう。でもこれは世界を一新する5Gの核となる要素のひとつなのです。

5Gの適用領域の一つとして自動運転があります。モバイルネットワーク経由で自動車を「管理・監視」すること自体は新しいことではないのですが、自動運転の場合新たに「制御」という要素が加わることになります。当然ながら、ブレーキやハンドル(ステアリング)の制御は人命に関わる話であり、遅延があっては困ります。富士通さんが数字を用いた具体的な説明を載せていましたのでご紹介します。

自動運転車が求める5Gならではのアプリケーションは大きく二つあります。第一は、集中管理センターから自動運転車の運転制御をオンラインで実行する「遠隔運転」です。この用途では、通信の遅延が許されません。時速60kmで走行しているクルマは0.1秒間に約1.7メートル走ります。仮に通信による遅延時間が0.1秒だとしたら、遠隔でブレーキをかけても、クルマが止まり始めるまでに1.7メートル移動することになってしまうわけです。急ブレーキをかけても間に合わない事態が起こりかねません。ここに5Gの低遅延高信頼モードを持ち込むと、無線区間の遅延時間が0.5ミリ秒以下なので、時速60kmのクルマの通信遅延による移動距離は1cm以下となり、遅延を考慮しないで運転制御できるようになります。

FUJITSU JOURNAL 次世代モバイル通信”5G”とは?【第3回】自動運転の安全性向上の鍵は5G より引用
https://journal.jp.fujitsu.com/2018/04/06/01/

医療分野においても似た様なことが言えます。今までも患者の映像をモバイルネットワーク経由で伝送し遠隔地にいる医師の診断に役立てるという取り組みは行われていましたが、超低遅延の実現により「遠隔手術」が可能になると言わています。実際に中国は今年の1月に5Gを用いた動物の遠隔手術実験を成功したと報道されています。

「超多数同時接続」がIoTの爆発的普及を支える

もう一つ忘れてはならないのがIoTの普及です。セキュリティ分野(監視カメラ、警備ロボット、ドローン等)、農業分野(気象センサー、農業ロボット等)、モビリティ分野(自動運転、高度道路交通システム 等)、工業分野(スマート工場)、スポーツ(スマートスタジアム)などなど様々な分野で、ありとあらゆる情報機器がネットワークに繋がります。その数は人間の数を遥かに上回り、移動体通信事業者はこうしたIoT機器の爆発的普及にも備えなければならないわけです。

現行の4Gでは1平方キロメートルあたり6万台の端末と同時に接続することが可能だとされています。1平方キロメートルの具体的な例を挙げると、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの合計面積とほぼ同じです。ディズニーリゾートは人間だけで数万人収容できるわけですから、その数を上回るIoT機器がディズニーリゾートに設置された場合、4Gでは全ての端末との通信を同時に捌くことが困難になります。
※もちろんこれは極端な表現であり、実際にはWiFiへのオフロードなど複数の手法を用いることで解決を図ることができます。

5GではこうしたIoT時代に対応できるよう、1平方キロメートルあたりの同時接続数が100万台以上に耐えられるように設計されています。

5Gで新たなエンターテイメントも生まれる

最後に5Gを始めとする最新技術のPR活動の一環でドコモが行っている取り組みをご紹介します。ドコモは「FUTURE-EXPERIMENT」と題して2017年からPerfumeを起用してこの取り組みを行っています。具体的な内容の一例は以下の動画をご参照ください。

5G(ネットワーク技術)と全天球カメラ(360°カメラ)、VR/ARといった他領域の技術が融合することにより、ライブ観戦やスポーツ観戦のようなエンターテイメントの世界でも新たな体験(experience)が生まれることでしょう。

最後に

4Gから5Gへの移行は、単に通信速度が向上することよりも遥かに大きなインパクトがあることをご理解いただけたかと思います。5Gのプレ商用サービスは2019年9月に提供され、商用サービスは2020年春に開始されます。この時期といえば、MNO(移動体通信事業者)としての参入を表明した楽天が商用サービスを開始する時期とも重なります。当然ながら、楽天も5Gに絡めたサービス展開を図ってきます。ますます、モバイル業界から目が話せません。

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