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分子料理法 − 球化 「出汁キャビア」

kitami

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みなさん、こんにちは。
料理を次のステージに引き上げるための大きな可能性を秘めている分子料理法。
前回の記事で、現段階で実際に料理に使うことができる分子料理法のテクニックを5つ紹介しました。

  • 球化
  • 泡化
  • ゲル化
  • 接着
  • 瞬間冷凍

このうち、今回は【球化】について詳しく見ていきましょう。

球化とは?

一言で言えば”液体を薄い膜で包んで球体にする”というものです。
イメージとしては、イクラやキャビアを思い浮かべていただければと思います。
方法としては非常に簡単で、好きな液体にある薬品を混ぜ水溶液Aを作り、別の薬品を混ぜた水溶液Bの中にスポイト等を使い水滴にして投下するだけ。
すると、水溶液Aと水溶液Bが触れることで化学変化が起こりその境界に薄い膜ができるので、水溶液Aがその膜の中に閉じ込められることで出来上がります。
かつて人工イクラなるものが存在し、その制作キットが販売されたりもしています。(https://www.amazon.co.jp/dp/B073VG6RB9
技術的には難しくありませんが、中に入れる液体やサイズ等の組み合わせによりアイディア次第では様々な料理に使うことができそうです。

分子ガストロノミー目線で見る

この球化の現象を起こすための作業自体は簡単ですが、水溶液Aと水溶液Bが触れた時にどのようなことが起きているか考えてみましょう。
まず、今回の実験に必要なものはこの2つです。

  • アルギン酸ナトリウム[(NaC6H7O6)n]
  • 乳酸カルシウム[C6H10CaO6]

薬品の画像

アルギン酸ナトリウム水溶液(水溶液A)

まず、アルギン酸ナトリウムとは海藻などに含まれるヌメヌメ成分である物質のことです。
この記事では、アルギン酸ナトリウムを閉じ込めたい液体に混ぜたものを水溶液Aとしています。
分量はアルギン酸ナトリウム1gに対して水100ml。
この分量はあくまで水を水溶液Aとして使う場合で、他のものを使う場合は分量が変わります。
今回は、出汁にアルギン酸ナトリウムを混ぜています。(出汁 : アルギン酸ナトリウム = 1 : 2)
アルギン酸ナトリウムを出汁に混ぜた画像
アルギン酸ナトリウムがしっかり溶けきるまで混ぜて作成するのですが、混ぜた際の粘度を頼りに分量を調整していきます。

乳酸カルシウム水溶液(水溶液B)

乳酸カルシウムは、ベーキングパウダーの原料などにも使われる物質です。
他にも、塩化カルシウムなどを使っても同等の結果を得られるが、乳酸カルシウムが出来上がったキャビアに余計な味がつかず料理に使うには適していると思います。
分量は、乳酸カルシウム1gに対して水100ml。
今回の実験では、水溶液Aを水溶液Bへの投下のみを行うので、水溶液Bは純粋に水を用いました。
乳酸カルシウムを水に混ぜた画像

分子構造の変化

アルギン酸ナトリウムは、「L-グルロン酸」と「D-マンヌロン酸」と呼ばれる2種類の糖が長く連なって出来ており、ジグザグした鎖のような形をしています。
アルギン酸ナトリウムがカルシウムに出会うと、ナトリウムが結合していた部分がカルシウムに置き換わるという化学変化が起こります。
さらに、1分子のナトリウムは1つの分子としか結びつきませんが、1分子のカルシウムは2つの分子と結びつくことができるので、カルシウムを介してアルギン酸カルシウム同士が結びつきはじめます。
つまり、乳酸カルシウム中に存在するカルシウムイオンがアルギン酸ナトリウムのカルボキシル基どうしを繋げていくことで、三次元構造になっていくのです。
これが球体の膜の正体です。
こうしてできた球体は熱にも強く、少し温めたぐらいでは溶けません。

出汁キャビア

海外では比較的研究が進んでいる分子ガストロミーですが、日本人の伝統を重んじる文化性からか日本ではまだまだこれからといった印象を持っています。
そこで、和食に分子料理法を活用していきたいと考えているので、今回出汁のキャビアを作成してみました。
水とは薬品の配合割合が異なるため、うまく固めるために試行錯誤しましたがひとまず出汁キャビアを生成することに成功しました。
出汁キャビアの画像
キャビアにすることで味を感じにくくなるため、味の濃さの調整や出汁の種類による配合割合などまだまだ課題はありますが、大きな可能性を感じる第一歩になったのではないでしょうか。
出汁は、和食の基本であり最も重要なものであるため、分子料理法においてもこの部分をコントロールできるようになる必要があると感じています。
出汁キャビアをうまく料理に活かすことができれば、他の分子料理法テクニックとのコンボでさらに可能性が広がっていくと思うので、引き続き出汁キャビアの研究を行っていきます。

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