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会津の郷土料理『こづゆ』って何?

kitami

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みなさん、こんにちは。
突然ですが、福島県会津若松市の郷土料理『こづゆ』をご存知でしょうか?
私は今、この『こづゆ』を分子料理法を使って再構築する研究をしています。何をもって『こづゆ』という料理になるのか?『こづゆ』の定義とは何なのか?
今回は、そんな『こづゆ』の正体を暴いていこうと思います。

全国各地の郷土料理をまとめているサイト郷土料理ものがたりによると、

ホタテの貝柱でだしを取り、豆麩(まめふ)、にんじん、しいたけ、里芋、キクラゲ、糸こんにゃくなどを加え、薄味に味を調えたお吸い物を、会津塗りの椀で食す料理。
多くの食材が盛られる贅沢な料理ながら「おかわりを何杯しても良い」習慣が有り、会津人のもてなしの心が表現されている。
会津藩のご馳走料理としてうまれたこづゆは、現在も正月や冠婚葬祭などの特別な日には欠かせないもてなしの料理。
具だくさんの材料の数は縁起のよい奇数が習わし。

と書かれていました。

しかし、このサイトに載っているこづゆの材料や作り方が普段私が作るこづゆとは若干違い、違和感を覚えたのが今回のお話の始まりです。
その後、ネットの海を漂うこづゆの材料や作り方の情報を探し回ったのですが、「これが会津の郷土料理『こづゆ』だ!!」と自信満々に書いているものを見つけることができませんでした。
どのサイトも材料に「〜など」や、作り方に「地域や家庭により…」のようなフワッとした感じを残しているものばかりだったのです。
そこで、本当の『こづゆ』とはどのようなものなのかを知るために『こづゆ』をよく知る郷土料理のプロに直接話を聞きに行くことにしました。

会津居酒屋・郷土料理 籠太

篭太の写真
今回私がお話を伺ったのは、居酒屋通・太田和彦さんが選ぶ、日本の居酒屋十選に東北で唯一選ばれた名店「会津居酒屋・郷土料理 籠太」の親父さん鈴木真也氏。

鈴木真也(すずきしんや)氏
「会津居酒屋・郷土料理 籠太」店主。
20代で京都にて日本料理を修業。日本料理専門調理師(福島県第1号として認定)。
昭和61年 会津若松市に「ふくまん」を開店。
平成3年 「会津居酒屋 籠田」を開店し、現在に至る。

直接事情を説明し、アポイントを取り付け開店前のお店に伺うと、『こづゆ』が生まれた歴史や作り方などを座学で、調理方法について実践形式で丁寧に教えてくださいました。

貝柱の出汁

まず、『こづゆ』の代表的な特徴の1つである貝柱でとった出汁。この部分に関しては、他で調べてもブレることのない条件の1つで、この「貝柱で出汁をとった汁物」という概念は揺るがなそうです。
しかし、この「貝柱でとった出汁を使った汁物」という条件だけで見ると、青森の「けの汁」、山形の「つぶつぶ煮」、新潟の「のっぺい汁」など近隣だけでも数多く存在しますが、これについても歴史を見ていくとなぜそうなったかが見えてきます。
物流の歴史を見ていくと、近江商人が北海道で仕入れた海産物を船に乗せて日本海側の各港に寄りながら大阪までのこぎり商売をしながら移動していたそうで、これが北海道で取れた貝類が全国各地に普及するようになったきっかけとされています。
これは私の推測ですが、貝柱を使って出汁を取る手法も、近江商人によって全国各地の港から広まっていったのではないでしょうか。

中国の料理『雲片』

さて、いよいよここから『こづゆ』のルーツに迫ります。
『こづゆ』が庶民の食べ物として広まる以前は会津藩の武家料理として楽しまれていました。そして、この武家料理のルーツはお寺などで食べられていた精進料理が元になっているとされています。精進料理とは、お寺で食べられていたことからもわかる通り、仏教と一緒に中国からやってきた文化であることから『こづゆ』の先祖となる料理は中国にありそうです。
そんな中国料理の中で『こづゆ』の元となったと考えられているものが、『雲片(うんぺん)』という料理です。
精進料理のレシピを掲載しているサイトSHOJINによると、

雲片とは、普茶料理(黄檗宗の開祖隠元禅師が中国から伝えた精進料理)の代表的な料理で、本来は調理の際に残った野菜くず等を余すことなく細かく刻んでとじたもの

と書かれており、実際に中に入れる具材等が予め決まっているものではなく、他の料理で使った材料の端材等を残さず使って調理するもののようです。
ここがルーツと考えると、材料に厳密な決まりはなく食材の旬やその時ある材料を使った家庭や地域ごとの特色があるのも理解できます。

郷土料理の伝え方

本当の『こづゆ』とはどのようなものか。具材は?作り方は?という疑問から始まった今回のお話。
料理が生み出された歴史を遡り、先人たちの知恵や思いを垣間見ることができました。
今回、わかったことをまとめると以下のようになります。

  • 『こづゆ』とは貝柱を使った出汁を用いた汁物である
  • 具材については、自由(季節や状況によって変えてよい)
  • 食材への感謝を忘れない(元は材料の端材を使う料理である)
  • 具材の数の決まりは後付け説濃厚だが面白いから意識したい
  • 会津人のおもてなしの心は受け継ぎたい

これらを踏まえると、郷土料理というだけでハードルが上がりがちですが、材料やレシピに縛られることなくもっと自由に作っていいと感じました。また、郷土料理を伝えていく際には材料やレシピだけでなく、その料理が生まれた背景やその料理が持つ意味合いを一緒に伝え、料理だけでなく心も一緒に受け継いでいく必要があると思いました。

『こづゆ』について教えてくださった「籠太」の鈴木真也さん。ありがとうございました。
今回学んだことを生かして、引き続き『こづゆ』を分子料理法で再構築する研究を進めていきます。みなさん応援よろしくお願いします。

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